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「10年代の文化の地平」

日時:2010年7月6日(火) 17:00-20:00

場所:日本財団ビル3階A会議室(http://www.vcasi.org/access.html

発表者:宮崎広和(コーネル大学人類学科・東京大学社会科学研究所
司会:青木昌彦(VCASI主宰)
コメンテーター:神山直樹(ドイツ証券)、春日直樹(一橋大学)

表題:「金融という文化―金融危機と金融社会論―」
金融市場に参加している人々の現実的人間像から,金融市場を捉えなおし,規制のあり方を考える.

概要:
 昨今の金融危機で「ウォール街の文化」、すなわち米国投資銀行で働く人々の行動パターンと倫理に注目があつまり、現在様々な議論が展開されている。議論のひとつの焦点は、投資銀行におけるインセンティブのあり方である。これは非常に重要な視点であることは間違いない。しかし、こうした議論の前提となっている人間像は、合理性と情動のはざまを生きる個人であり、さまざまな関係性によって構成されるより多元的な現実を生きる実際の人間とはかけはなれた、単純化された人間像である。世界中で多くの人々に犠牲を強いた今回の危機は、より現実的な人間像にたった市場とその規制のあり方を考える絶好のチャンスである。
 1990年代後半以降ミシェル・カロン、カリン・ノール=セティナ、ドナルド・マッケンジーらヨーロッパにおいて科学社会論(Social
Studies of Science)をリードしてきた社会学者たちは、科学から金融へと分析の視点を移し、文化人類学者や人文地理学者とともに金融社会論(Social
Studies of Finance)という学際的なフィールドを構築した。このフィールドの特徴は、金融市場を、金融(経済)理論、コンピューター技術、数式、文書、さまざまな制度的・組織的要素、そして身体・情動・思考を持つ生身の人間のネットワークとして構築されたものと理解することである。このように金融社会論は、新古典派金融論とも、行動金融論とも異なる立場から、金融市場のさまざまな側面に関する実証的研究を展開してきた。例えば、マッケンジーは、オプションのプレミアムを算出するブラック=ショールズ式に基づいた計算手法をオプション・トレーダーが共有しトレーディングに使用することによって、オプション市場がブラック=ショールズ式に合致するように動き始めた過程を分析している。
この学際的フィールドに初期から参加した私は当初から、金融社会論にマリノフスキー、モース、ポランニー以来の経済人類学的視点にもとづいたより広い経済観・市場観を導入するよう努めてきた。今回のセミナーでは、金融社会論のこれまでの成果を紹介しながら、現代金融理論の中核をなし、金融商品のプライシングやトレーディングの基本的手法として確立しているアービトラージ裁定取引)とそれに内包されたさまざまな理論的・技術的・社会的要素に焦点をあてる。具体的には、1987年以降東京のある大手証券会社の自己売買部門で先物やオプションなどのデリバティブを使ったアービトラージに携わってきたトレーダーたちのキャリア(金融実務とそれに付随したさまざまな知的営為の軌跡)を分析し、アービトラージ的手法と思考が、日本の制度的・組織的要素との関係のなかで、過去20年余の日本のデリバティブ市場とデリバティブ・ビジネスの展開にどのような意図され、そして意図されない影響を与えてきたか検討したい。そして、この事例を通じて、金融理論、金融技術、そしてそれらを扱う人々の行動、思考、想像力こそが金融市場そのものであり、今後の金融制度改革の議論の進展のためには、市場と市場行動をより広角にとらえる視点が不可欠であることを示したい。

参考文献:(宮崎先生に作成していただいた関連文献の一覧を転載いたします。)

[発表者の著作]
Miyazaki, Hirokazu, 2007. Between Arbitrage and Speculation: An
Economy of Belief and Doubt. Economy and Society 36(3): 397-416

Miyazaki, Hirokazu, 2005. The Materiality of Finance Theory. In
Materiality.Daniel Miller, ed. Pp. 165-181. Durham: Duke University
Press

宮崎広和 2008 「トレーダーと希望――投機から裁定へ」春日直樹編『人類学で世界を見ると−−医療・生活・政治・経済』281−298頁、ミネルヴァ書房
(この論集は春日さんが編集された学部生向けの教科書ですが、現在日本で活躍する若手の人類学者の仕事を俯瞰するうえで役立ちます。)

[金融社会論の基礎文献]
Beunza, Daniel, and David Stark, 2004. Tools of the Trade: The
Socio-Technology of Arbitrage in a Wall Street Trading Room."
Industrial and Corporate Change 13: 369-400.

Callon, Michel, 1998. The Laws of the Markets
(Wiley-Blackwell)[特にイントロダクション](この論文が金融社会論のはじまりでした。)

MacKenzie, Donald, 2003.An Equation and Its Worlds: Bricolage,
Exemplars, Disunity and Performativity in Financial Economics. Social
Studies of Science 33: 831-868.

[金融人類学の概要]
Maurer, Bill, 2006. "The Anthropology of Money." Annual Review of
Anthropology 35:15-36

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ご参加いただける方は、件名を『「金融という文化」参加希望』とし、

event(at)vcasi.org

宛てにお名前とご所属(ご専門)をお知らせ下さい。多くの方々のご参加をお待ちしております。

※皆様方の周囲で興味をお持ちになりそうな方にこのお知らせをご転送いただければ幸いです。
お誘い合わせの上ぜひご参加ください。

※後日web siteにて詳細をご報告する予定です。過去のVCASIセミナーについては以下のURLをご覧ください。

http://www.vcasi.org/event_list/seminar

東京堂書店トークイベント@古典新訳文庫
『経済学・哲学草稿』マルクス 長谷川宏訳 刊行記念
長谷川宏さん トークイベント
ヘーゲルからマルクスを、
マルクスからヘーゲルを読む。
−新しい思想はいかにして生まれたか?

開催日時 2010年7月6日(火)18:00から(開場17:45)
開催場所 神田本店6階
参加方法 参加費500円。要予約、事前にお電話/メールにて承ります。
メール(tokyodosyoten@nifty.com)にて、件名「長谷川さんイベント参加希望」・お名前・電話番号・参加人数をお知らせ下さい。
7月5日,6日は、お電話にてお問合せください。
電話 03−3291−5181

http://www.tokyodoshoten.co.jp/event9.htm

第71回紀伊國屋サザンセミナー
『神話が考える』(青土社)刊行記念
「10年代の文化の地平」

■日時 7月6日(火) 19:00開演(18:30開場)
■出演 東浩紀さん 福嶋亮大さん 濱野智史さん 黒瀬陽平さん 渋谷慶一郎さん
■会場 新宿・紀伊國屋サザンシアター紀伊國屋書店 新宿南店7階)
■料金 1,000円(税込・全席指定)※6月1日(火)10:00より発売
■前売取扱い 6月1日(火)10:00より
キノチケットカウンター(新宿本店5階/受付時間10:00〜18:30)
紀伊國屋サザンシアター(新宿南店7階/受付時間10:00〜18:30)
■電話予約・お問合せ 紀伊國屋サザンシアター(TEL 03-5361-3321、10:00〜18:30)
《チケットのご予約・お問い合わせは6月1日(火)以降にお願いいたします。》
■共催 青土社 紀伊國屋書店
■協力 河出書房新社

■出演者プロフィール
東浩紀(あずま・ひろき)
1971年生。批評家・思想家・作家。早稲田大学文学学術院教授。東京工業大学世界文明センター特任教授。主な著書に『存在論的、郵便的』(新潮社)『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社)など。

福嶋亮大(ふくしま・りょうた)
1981年生。文芸評論家・中国文学者。京都大学文学部非常勤講師。著書に『神話が考える』(青土社)。他、『思想地図』、『ファウスト』、『ユリイカ』などに寄稿。

濱野智史(はまの・さとし)
1980年生。批評家。株式会社日本技芸リサーチャー。著書に『アーキテクチャの生態系』(NTT出版)。共著に『ised 情報社会の倫理と設計 倫理篇/設計篇』(河出書房新社)。

黒瀬陽平(くろせ・ようへい
1983年生。美術家・批評家。『カオス*ラウンジ2010』キュレーター。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士後期課程在籍。『思想地図』、『文學界』、『ユリイカ』などに寄稿。

渋谷慶一郎(しぶや・けいいちろう)
1973年生。音楽家。2002年ATAK設立。主な作品に『ATAK000 keiichiro shibuya』『ATAK015 for maria』『アワーミュージック 相対性理論渋谷慶一郎』など。

◎イベントの出演者・内容については急な変更等ある場合がございます。予めご了承ください。
◎尚、当サイトでの前売券売り切れ等のご案内は遅れる場合があります。チケットの残数については紀伊國屋サザンシアターにお問合せください。

http://www.kinokuniya.co.jp/01f/event/event.htm