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宮台真司解体新書− 現代日本の30年史

鈴木健先生「社会システム2.0 〜なめらかな社会とその敵〜」(第2回VCASIブレインストーミングセッション)
VCASIセミナー 社会学
日時:
2010年4月12日(月)18:00-21:00
場所:
日本財団ビル3階A会議室
発表者:
鈴木健東京大学大学院総合文化研究科/情報社会学
概要:
情報技術を用いて、この社会をバージョンアップすることを試みたい。活版印刷技術が数百年かけて近代社会に様々な革命をもたらしたように、コンピュータやインターネットの登場は、社会に革命的な変化をもたらすと言われてきた。しかし、インターネットが社会に広く利用されるようになって15年たつが、未だにこうした変化は起きていない。これはむしろ当然ともいえる。アラン・ケイの言う通り、300年スパンでしか本質的な変化は起きないのかもしれない。本研究では、アラン・ケイの「未来を予測する最良の方法は未来を発明することである」という有名なテーゼに基づき、社会システムを発明することを試みる。具体的には、貨幣システム、投票システム、軍事システムなどがその対象となる。伝播投資貨幣PICSY、分人民主主義 divicracyといった発明がどのように国家、組織、個人といったものの仮想化を支えていくか、理論、数理モデル、思想、分析、背景などを含めて総合的に議論する。近代社会を成立させた私的所有、自他分離、友敵区別の概念を乗り越えることによって、近代社会の単なるマイナーバージョンアップではなく、メジャーバージョンアップを目指したい。

カール・シュミットの友敵概念による政治の定義は、メンバーシップを厳密に区別する近代システムの極端な例といえる。こうした考え方は、現実の政治システムを記述する正確さをもつとともに、大規模で過酷な戦争も起こしてきた。しかし、そうした自他分離と私的所有は、オートポイエーシスのモデルに見られるように、40億年前の細胞の誕生から起源をもっている根の深い現象である。そして、近代社会システムは、国民国家に付随する膨大なサブシステムを構築することによって、極めて強いメンバーシップを作り出している。従って、並大抵のシステム改善では、このシステムを変更することはできない。

相互に出入りがしにくい社会をステップな社会、摩擦がまったくないのっぺりとした社会をフラットな社会とすると、本研究が目指すのはその中間のなめらかな社会である。社会を社会ネットワークとしてみたときに、そのネットワークを分断するシステムに対抗するためには、社会ネットワークの力を十全に発揮するアーキテクチャの設計が必要である。インターネットの登場によって勃興するソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は、既に4億人を超えるFacebookをはじめ、世界で10億人以上のユーザが利用し始めている。SNSの上に社会システムを構築すれば、こうした壁をアドホックにできる可能性を秘めている。

そのような例のひとつとして、伝播投資貨幣PICSYを紹介する。PICSYは、全てが投資の貨幣であるという興味深い性質をもつ新しい貨幣システムである。取引をすると行列上にデータが蓄積される。その固有ベクトルを計算することによって、その人の全社会での貢献度を計算し、貨幣の購買力として利用できるシステムである。そのため、PICSYは世界規模の人事評価システムともいえる。PICSYにおいて、組織は単なるインターフェイスにしかすぎず、貨幣論的に組織を仮想化することができる。世界貨幣として構想されているが、企業の人事評価システムとしても応用されている。

また、伝播委任投票システムは、委任をさらに自動的に委任することができる投票システムである。これにより、1票を分割して矛盾した投票をしても、投票社会ネットワークを票が伝播して、最終結果を導く。このシステムによって、政党や派閥、利益団体を仮想化、透明化し、万人が少しずつ政治家であるような社会システムを構想することができる。世界政府の投票システムとして考えられているが、企業や組織などで部分的に導入することもできる。こうした社会では、人々は複数のコミュニティに同時所属し、アドホックに帰属を切り替える。ドゥルーズのいうとおり、個人(individual)は、もはや分人(dividual)であるともいえる。個人民主主義から分人民主主義(dividual democracy)への移行が可能となる。

社会契約は、ホッブズ、ルソー、ロックらによって議論されてきた概念であるが、国民国家を成立させるための仮構にすぎない。本研究では、実際に社会契約をするようなシステムを考え、社会契約をプログラミングする世界を構想する。そのような社会契約は、自然言語人工言語がハイブリッドに結合したあたらしい法律言語によって可能になる。ライフログ技術やユビキタス技術の発達と結びつき、法は規制するものではなく、自動実行されるものとなる。法の自動実行がもたらす新しい社会論について展開する。

以上のような方法は、情報取得システム、社会保障システム、保険システム、軍事システムでも同様の応用が可能である。国家と個人の相互依存に頼らないなめらかな社会システムが、情報技術を用いて実現可能か議論をしていきたい。

世界は非常に複雑な相互作用のネットワークによって成り立っている。これを少しでも可視化し、日常の中で触れられるようにすれば、私たちの社会観を変え、世界の距離を再設計することが可能だ。発表者のここ10年の研究内容の総括的な研究会とする予定である。

参考情報:「なめらかな社会の距離設計」(鈴木健http://ised-glocom.g.hatena.ne.jp/ised/20060114

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VCASIセミナー | 仮想制度研究所 VCASI
鈴木健氏「社会システム2.0 ~なめらかな社会とその敵~」(第2回VCASIブレインストーミングセッション) | 仮想制度研究所 VCASI

ツイッターノミクス』刊行記念イベント タラ・ハント&津田大介と『ツイッターノミクス』について語ろう 開催!
ブックファースト新宿店・1Fブルースクエアカフェ内イベントスペース
4/12(月) 午後7時〜午後8時30分 (開場午後6時30分)
先進的なウェブ戦略で「組織のイメージアップと顧客を増やす即効性のある処方箋」と米国、日本で大きな話題となっている
ビジネスパーソンの新バイブル、『ツイッターノミクス』の著者、タラ・ハントさんが来日し、下記の日時にトークイベントを行います。
ゲストとして、同書に解説文を寄稿いただいた津田大介さんをお招きして、ハントさんの提唱する先進的なウェブ戦略について二人で語り合ってもらうと共に、来場者とのトークセッションを行いたいと思います。

■お申込 ブックファースト新宿店にご来店の上、Eゾーンレジカウンターにてお申込下さい。先着40名様にイベント参加整理券を無料配布いたします。

ツイッターノミクス』/タラ・ハント(文藝春秋/1649円税込)


※ 整理券はお一人様一枚ずつとさせて頂きます。
※ 当日は自由席です。先着順にお座り頂きます。
※ 当日メディア撮影が入ります。あしからずご了承下さい。   

タラ・ハント『ツイッターノミクス』村井章子=訳 津田大介=解説|特設サイト|文藝春秋

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宮台真司解体新書− 現代日本の30年史

文化社会学者 大河原 麻衣

曜日・時間・回数
月 18:30-20:00 全3回 日程
4/12, 5/10, 6/14
受講料
4-6月(3回)  会員 8,820円
一般 10,710円

講座内容
この講座では、宮台真司の著作を通じて、1980年代以降の日本社会の激変を読み解き、次の時代への生きるヒントを探ります。1980年代以降、日本社会は、若者・文化・経済・政治・外交など多岐にわたり、旧来の枠組みでは対処できない激変が生じてきました。その中で、変化を予見し・体現し・応答して耳目を集め続けているのは、社会学宮台真司をおいて他にはいないでしょう。「まったり生きる」ことの推奨から一転、時に過激にエリートの必要性を説く学者が、なぜこれほどまでに支持され続けているのか。この問いを糸口に、1980年代以降の日本社会とは何であったのかを再考したいと思います。(講師・記)

講師紹介
大河原 麻衣(オオカワラ マイ)
1979年生まれ。首都大学東京大学院社会科学研究科博士課程。現代位相研究所・上級研究員。専門は、文化社会学・家族社会学。論文に「リテラシー教育におけるマタイ効果を超えて」(『未来心理 Vol.12』)、「能動性の統治論的考察――『自己との関係』の現代的位相」(社会学論考第29号、共著)。また『宮台真司初期思考集成』(共著、勁草書房)、ニコラス・ローズ『〈魂〉の統治』(共訳、以文社)を出版予定。
 
http://www.asahiculture-shinjuku.com/LES/detail.asp?CNO=70050&userflg=0