課題:1970年代以降の日本の思想あるいは作品(ジャンル、メディアは問わない)をひとつ取り上げ、日本語で考え発表することの意味を軸として、作家論あるいは作品論を展開せよ。
課題説明:1990年代以降、思想の言語はほぼ英語に統一された。他方で日本では、1995年以降、社会の構造が大きく変わり、思想地図の再編を迫られた。結果として、いま日本の批評的な言説は、国内独自の発展を遂げ、国外との連携を急速に失い始めているように思われる。たとえば、本誌編集委員の東浩紀と北田暁大の仕事には、1995年以降の日本の言論界に無知な、国外の読者に紹介することが難しいものが多数含まれている。
その閉鎖性は大きな問題だが、しかし逆に、「グローバル」なパラダイムが必ずしも思想的な強度を保証するものでもない。もしかしたら私たちは、いま、たいへん思想的に豊かなのだが、しかし、ただ日本語で書かれているという条件のためだけに、その豊かさが忘れられる運命にあるような、そのような袋小路の時代に入り始めているのかもしれない。
本誌はそのような環境のなかで創刊された。本誌が、これからかつての『批評空間』派のようにグローバルな連帯を目指していくのか、それとも宮台真司や大塚英志のように足下の国内的な強度を目指していくのか、その方針は実は編集委員のあいだでも決まっていない。そのような私たちに指針を与えてくれるような、広がりのある刺激的な論考を期待している。
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