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「ケアとケア労働 - 日本とフランスにおける新たな課題」

2月28日(水)18:00〜20:00 サンドラ・ロジェ、岡野八代「ケアとケア労働 - 日本とフランスにおける新たな課題」日仏会館ホール

www.mfj.gr.jp

サンドラ・ロジェ 「ケア、不可視化と傷つけられやすさ」

ケアの倫理は、まず女性的なものとして認識されていた道徳的価値観(ケア、他者への配慮、思いやり)を高める提案によって、倫理の支配的な概念を修正することに貢献した。 それは、倫理の問題を政治に持ち込み、傷つけられやすさを道徳の中心に据えた。 支配的な道徳理論を活気づける自律性の理想に逆らって、ケアは、私たちは皆、自分の欲求を満たし、日常生活や災害時でも生きていくために他者を必要としているということを思い出させてくれる。ケアの倫理は、道徳に導入されて以来、社会的プロジェクトとしてより広範囲に明らかになった。一方、ケアの断片化により、他者のための取組みにおける道徳的および政治的自立の本当の基盤が見えにくくなっている。

 

岡野八代「ケア、環境、安全保障 ー日本における事例から」

ケアは一般的に、調和的で暖かな親密な関係性のなかで行われる営みだと理解されがちである。しかしわたしがケア研究、とくにケアの倫理研究に出会ったのは、日本軍「慰安婦」問題を研究するなかであった。ケアとは、圧倒的な暴力、理不尽な暴力に傷つけられた者たちへの注視をも意味している。日本は、毎年必ず日本列島に襲い掛かる台風や、2024年お正月の能登半島地震でまたしても目を開かされたように、とても脆弱で、日本に住む誰しもが突然、なすすべもなく自然に飲み込まれてしまうような環境のなかにある。他方で、コロナ禍のなか、医療をはじめとした公的なケアがいかに不足しているかを経験したが、そうしたことは忘れたかのように、日本政府は軍事倍増、世界第三の軍事大国を目指そうとしている。ケアの倫理研究から、いかに現在の日本の環境と安全保障問題を考えることができるのか。