河村書店

人文系イベント紹介サイト

社会モデルへのパラダイム転換 – コミュニケーション不全から

58.大野更紗「社会モデルへのパラダイム転換 – コミュニケーション不全から脱却するために」 (司会・荻上チキ)
日時 & 場所 : 2011年12月4日(日) 15時〜17時 / 光文社 地図はこちらです
定員 & 費用 : 10名 / 7,875円(税込)
セミナー概要:

今日の日本社会が抱える広範な課題は、3月11日に突然出現したものではない。戦後の日本社会システムがその生成時点から抱え続けてきた慢性的機能不全が、震災という大きなショックを契機に、わたしたちの目前に露出し突きつけられている。

震災後の議論、特に人の生存権社会権に抵触する領域について、具体的な対策を議論をしようとするとき、わたしたちはコミュニケーション不全に陥る。最低限の「共通言語」の概念の共有すらなされていないのが、今日の日本の言論の現実である。共通言語の不在は、各分野の論者による政策論連携の阻害要因ともなっている。日本社会のシステムがそうであるように、ディシプリンや言説も「タテ割り」の傾向がいまだ強い。

超高齢化という未知の人口変動やグローバリゼーションの進行、情報の不確実性や認識エラーの発生は、避けがたい自明の現実である。エラーの連鎖は、ときに紛争と化し、「不毛な議論」への対応に論者たちはエネルギーを割かなくてはならなくなる。かつて「全知全能」の神々であった言論は、万能性がその代償に孕む脆弱性にさらされている。他者のエラーや失敗を容認するためのパラダイム転換なくして、「わからないことが多い」時代の言論は協働しえない。

常に変化してゆく現実の動態に柔軟に向き合い、建設的な議論をしてゆくために。いかにして互いのコミュニケーション不全から脱却し、パラダイム変換を果たせるか。参加者の方々と、人のQOL(生活の質)を確保する「臨床の武器」たる共通言語を、ともにこの場でもつことができればと思う。
大野更紗(おおの・さらさ)
1984福島県生まれ。作家。難病当事者。上智大学国語学部フランス語学科卒。同大学大学院グローバル・スタディーズ研究科地域研究専攻博士前期課程休学中。著書『困ってるひと』 blog: http://wsary.blogspot.com/ twitter: @wsary

http://synodos.jp/seminar_lecture