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〈飯山由貴×イ・ラン×FUNI〉アートと「検閲」―― 飯山由貴《In-Mates》上映と日・韓・在日 アーティストによるトーク

〈飯山由貴×イ・ラン×FUNI〉
アートと「検閲」――歴史の否定・権力への忖度とどう向き合うか
飯山由貴《In-Mates》上映と日・韓・在日 アーティストによるトーク
 
2023年3月4日(土)14:00~1630
日本映画大学白山キャンパス
https://www.eiga.ac.jp/access
*zoomによる同時配信あり
*現地参加・オンラインのいずれ場合も要申し込み。
 
本ベントでは昨秋、東京都人権部による事実上の検閲により東京都人権プラザでの上映が許可されなかったアーティスト、飯山由貴の《In-Mates》(2021年制作)を上映し、作家の飯山本人および本作に登場する在日コリアンでラッパー・詩人のFUNI、また同じ頃、出演予定だった国家的な行事で自作曲が問題視され、公演直前に演出担当者とともに降板させられた韓国のアーティスト、イ・ラン(オンライン参加)の3人によるトークを行う。歴史の否定が差別を助長すること、また表現の現場における権力への忖度について考え、国境を越えて危機感や問題意識を共有し、経験を交換する場としたい。司会はハン・トンヒョン(日本映画大学准教授)。
日本映画大学ハン・トンヒョン「映画で学ぶ歴史と社会4〈ネイションとエスニシティ〉」特別公開授業/大阪公立大学明戸隆浩研究室ジョイント企画)
 
*申し込みはこちらのリンクから(締切は3月3日12時。現地参加・オンラインとも定員に達した場合締め切ります)。
https://forms.gle/4AvqKdkvHh9sAiUh9
*お問い合わせは、han☆eiga.ac.jp(☆を@に変えてください)まで。
 
■登壇者プロフィール
飯山由貴(いいやま・ゆき)
美術作家。神奈川県生まれ。東京都を拠点に活動。映像作品の制作と同時に、記録物やテキストなどから構成されたインスタレーションを制作している。過去の記録や人への取材を糸口に、個人と社会、および歴史との相互関係を考察し、社会的なスティグマが作られる過程と、協力者によってその経験が語りなおされること、作りなおされることによる痛みと回復に関心を持っている。近年は多様な背景を持つ市民や支援者、アーティスト、専門家と協力し制作を行っている。近年の主な展覧会として、2022年『地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング』(森美術館、東京)、2020年『ヨコハマトリエンナーレ2020 AFTERGLOW̶光の破片をつかまえる』(横浜美術館、神奈川)など。
イ・ラン(Lang Lee)
シンガーソングライター、映像作家、コミック作家、エッセイスト。1986年ソウル生まれ。16歳で高校中退、家出、独立後、イラストレーター、漫画家として仕事を始める。その後、韓国芸術綜合学校で映画の演出を専攻。日記代わりに録りためた自作曲が話題となり、歌手デビュー。アルバム『オオカミが現れた』、『神様ごっこ』、『ヨンヨンスン』など。2022年のソウル歌謡大賞で「今年の発見賞」を受賞、アルバム『オオカミが現れた』は同年の韓国大衆音楽賞で「今年のアルバム」賞と「最優秀フォーク・アルバム」賞を受賞、楽曲『神様ごっこ』は2017年の同賞で「最優秀フォーク楽曲」賞を受賞。日本語訳のある著書に、エッセイ集『話し足りなかった日』、『悲しくてかっこいい人』、短編小説集『アヒル命名会議』、漫画家いがらしみきおとの往復書簡『何卒よろしくお願いいたします』、コミック『私が30代になった』。
FUNI(フニ)
ラッパー・詩人。2002年、東芝EMIよりラップユニット「KP」のFUNIとして活動を始める。2002年から2010年までにシングル2枚、アルバム5枚をリリース。2004年「NHKハングル講座」においてラップで講師も務める。2006年、金城一紀原作『GO』の舞台化において俳優、楽曲の提供。2010年よりプロデューサー兼トラックメーカーのOCTOPOD、ラッパーINHAとMewtant Homosapience結成。『ルポ川崎(サイゾー)』をきっかけにお蔵入りになっていたアルバム「KAWASAKI」をリリース。2015年よりアメリカ、ロシア、アフリカ、パレスチナイスラエルなどのスラムを旅しながら楽曲制作。
 
■経緯
・2022年8~11月、東京都の指定管理施設である東京都人権プラザ(公益財団法人東京都人権権啓発センター)の主催事業として開催されたアーティスト・飯山由貴の企画展「あなたの本当の家を探しにいく」の関連イベントとして、飯山の映像作品《In-Mates》(2021年制作)の上映とトークが予定されていたが、東京都総務局人権部は上映を不許可とした。
・《In-Mates》は、1945年に空襲で焼失した精神病院・王⼦脳病院(東京)の⼊院患者の診療録にもとづくドキュメンタリー調の映像作品。本作では、同院の診療録に記録された2⼈の朝鮮⼈患者の実際のやりとりにもとづき、ラッパー・詩⼈で在⽇コリアン2.5世であるFUNIが、⾔葉とパフォーマンスによって彼らの葛藤を現代にあらわそうと試みる姿が記録されている。また作品内では、当時の時代背景への理解を深めるため、FUNIと飯⼭が専門家のレクチャーを受ける様⼦も収められている。
・東京都人権部が人権啓発センターに送ったメールによると、人権部は①関東大震災での朝鮮人虐殺を事実だとしていること②作品内のラップの歌詞が見方によってはヘイトスピーチととらえられかねないこと③作品を通じて在日朝鮮人が生きづらいと強調されていること――に懸念があるとしていた。
・作家たちは、人権部による上映不許可は東京都による歴史否認と外国人差別の助長にもつながりうるきわめて深刻な事態であり、東京都の人権行政の内実が厳しく問われるべきであると指摘し、謝罪と上映の実施を求めているが、東京都はこの件について事実と異なった説明をするなど、不誠実な態度を取り続けている。
・一方、韓国でも昨年10月に行われた「釜馬民主抗争」(1979年10月、釜山および馬山地域を中心に起きた朴正熙政権の維新独裁に反対したデモ運動。40周年を迎えた2019年から国家記念日に指定され、政府が主管する公式記念行事が行われている)記念式典と関連して、式典で公演が予定されていた楽曲が問題視され、直前になって演出担当者と歌手が降板させられるという出来事があった。
・報道によると、9月末になって式典への大統領の出席が検討されるなか、アーティストのイ・ランが歌う予定になっていた自作曲『オオカミが現れた』について政府の行政安全部が難色を示し、式典を主催した釜馬民主抗争記念財団に圧力をかけ、財団がそれを受け入れたという経緯だ。準備は進んでいたにもかかわらず出演料も未払いのままで、責任もうやむやになっているという。
・演出のカン・サンウ監督とイ・ランは行政安全部に対し、「国家機関などは芸術を検閲してはならない」とした「芸術家権利保障法」違反だとして、提訴を準備中だ。
 
■参考
東京都人権部が飯山由貴のアート作品を検閲か。小池百合子都知事関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への態度も影響した可能性
https://www.tokyoartbeat.com/.../iiyamayuki-tokyo...
朝鮮人虐殺」を扱うアート作品、東京都が上映取りやめ… 歴史認識に「懸念」小池知事の追悼文問題に言及も
https://www.buzzfeed.com/.../kot.../kanto-massacre-art-tokyo
「東京都人権部は、歴史的事実を扱う作品への検閲を、二度と繰り返さないでください。在日コリアンへの差別という重大な問題を起こしたことを謝罪し、公開を中止した作品の上映を行ってください!」
https://chng.it/8dCbpyhqVF
第43回釜山・馬山抗争記念式典に出演予定だった歌手イ・ランの曲「オオカミが現れた」を行政安全部が問題視したという検閲疑惑。記念式典の総合演出担当のカン・サンウ監督と歌手イ・ランに話を聞いた(韓国語)
https://www.sisain.co.kr/news/articleView.html?idxno=49119
「釜山・馬山抗争記念式典」公演曲の変更を求められた歌手イ・ラン インタビュー(韓国語)
https://h21.hani.co.kr/.../cul.../culture_general/52962.html
イ・ラン『オオカミが現れた』の歌詞に見る「連帯」の力
https://turntokyo.com/features/lang-lee-ookamigaarawareta/
韓国の「芸術家の地位と権利の保障に関する法律」の概要(日本芸能従事者研究所)
https://artsworkers.jp/.../b7ea9a82cbc2fc734124c7e5e761de...